未覚沫雪
伊賀の廊下は鴬張りで
危険を警告したけれど
 聞く耳持たれず放置され
「母」の気遣い報われず

毒殺未遂でケンカ勃発――
 
床下一同、落胆をする
 
 
まだ雲もない秋晴れの空
わずか生じたかすかな感情 
季節はずれにふと舞い降りた
泡雪のように儚く消えて

「母」もあの子も気付かない――
 
床下一同、ため息をつく
 
 
距離は近まりまた遠ざかり
いつまで経っても同じ立ち位置 
松葉に積る雪は儚く
滅多にないと人は言う

それでもきっと、いつの日か――
 
床下一同、ささやき交わす


贈る気持ちが熱過ぎて
寄り添うにはまだ早すぎて
「季節はずれ」というならば
季節来るまで待てばいい

巻向の
檜原も未だ
雲居ねば
子松が末ゆ
沫雪流る

溶けて流れて雫となって
天にのぼってまた現われて
二人並んで迎えた景色は
白一色で染められる

触れて差し出す手の温度
それにも溶けない積った感情
寄り添い並ぶ銀世界
染める気持ちのその正体

いつか互いに気づけるだろう――

床下一同、冬を待つ


あとがき
信頼し合って近くにいるからこそお互い無自覚甲賀組。
カステラの話はまだ時期が早すぎたけど・・・とかどうでしょう?
なんか恥ずかしいな…というか床下様を主役にしろというのが無理難題。未だかつてこんなに難しい題材があっただろうか、いやない(反語)
というわけで床下様×三巻=カステラの話≒佐助ぼたんになっている点はご容赦。
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