MarineBlue
青、蒼、碧・・・ 冴え冴えとして深く濃く 覗き込めば吸い込まれてしまいそう そうだ、この感覚。 あの時の・・・ よく晴れた夏の午後、今日こそは復讐を果たそうと(懲りずに)目論んだレオは、 伊賀の里を訪れた。 怪しまれぬよう愛想よく挨拶をし、上手く招き入れられたまではよかった。 後は隙をついて銃を構え、実行するのみ。しかし。 「・・・・・・」 先刻から、身動きが取れない。 なぜなら、標的が自分から目を離そうとしない・・・ というより、凝視されているからと言った方が正しいか。 「―――ッ!エエィ、言いたいことがあるならはっきり言ったらどうでス!!! メンチ切るたぁいい度胸してるじゃねぇかコラ・・・(キャラ変わってる)」 視線に耐えかねて、語調が変わりながらも向かいに座っている伊賀ずきんに詰め寄る。 少女の瞳に、自分の顔が映っていた。 「やっぱり! ―・・・海の色だ」 「ハ?」 納得したように言って、伊賀ずきんは近くにあった鏡をレオの前へと差し出す。 当たり前に映るのは、怪訝そうな自分の顔だけ。 「一体何ガ・・・」 「水色と言うには濃くて、紺色と言うには鮮やかで、群青とも藍色ともつかない 深くて不思議な青い色・・・・・・レオさんの瞳のことです」 いつか潜った深い海。 水底へ沈んでいく感覚、眩むようなとりどりの青。 それはまるで、飲み込まれていくようで・・・ 青に、溺れた。 「でももう泳げるし、また海水浴に行きたいなぁ・・・今度こそスイカ割り・・・」 ガタンッ 「うわ!?」 勢いよく立ち上がった音が、浸っていた伊賀ずきんを現実に引き戻す。 「・・・・・・また人の情に訴えて、や(殺)る気を削ぐ作戦でスカ!その手にはもう・・・」 のらない、と言いかけ構えた種子島の向こうに、伊賀ずきんが持つ鏡があった。 映る夏の空色と、異人特有の青い瞳。 ―Sky blue・・・いや、違ウ。確かに、この色は・・・ 「帰りマス!」 「ええっ!?早っ!!」 「今度はこうはいきまセンからネ!」 覚えてろロ、と言わんばかり、踵を返し去って行く。 ―いつもいつも・・・社交辞令、お世辞、とにかくなにか裏があるに決まっテル! 今までのように簡単に騙されたりしてたまるカ!そう、決して・・・ 幼い頃、甲板の上から覗き込んだ海。 深く、全てを飲み込んでしまいそうで、怖くて、不思議に綺麗で。 その色を今、少しだけ思い出した― 「だから騙されないと言ってるでショウ!!!」 一人でずんずんと肩をいからせて歩くその頬が、 いつもより少しだけ紅くなっていたのを、太陽だけが知っていた。 一日で一番暑い時間帯、青い海が恋しくなる、そんな真夏の午後の事だった。





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あとがき
恥ずかしいセリフ禁止。(漫画違う)