明日へ
一歩、一歩 里が遠ざかるにつれ 私は独りになっていく 一歩、一歩 足を踏み出すごとに 私は自由になっていく 色んなものに 色んな人に 別れを告げた 見送る人たちを残して 名前を捨てて 確かなものは 自分の身ひとつだけ つきまとうのは 小さな期待 大きな不安 でも もう掴まない もう縋らない あの人のように 理由もないまま走ることは まだできなくても こうして一人で 歩きだすことはできたから 強くあるために 強くなるために ずきんを脱いだ あの時から 伊賀を離れた その時から 私はこうして 一歩、一歩と確実に 『ワタシ』に 近づいて行っている 私は 別れを告げたんじゃない 離れて行くんじゃない 近づきに行くの 確かな理由は 今は手元にないけれど どこにあるかも 見つかるかも 何ひとつわからないけれど 見つけてみせる 『だから行くのさ』! 昨日に 戻ることはできないから 今日に 留まることはできないから だから―― 明日の『ワタシ』に 会いに行こう。






あとがき
手を伸ばしたのは何かを掴むためだから。
Fは最後なんになるのでしょうか。